金沢の人気観光地・ひがし茶屋街のすぐ近くには、静かに佇む石段坂「あかり坂」があります。作家・五木寛之氏に名付けられたこの坂は、主計町茶屋街へと続く小径で、周囲には古い町家が並び夕暮れどきには幻想的な風情に包まれます。ほの暗い石畳を下りながら金沢情緒を感じる散策ポイントとして、隠れた魅力を放っているのです。本記事では、あかり坂の見どころや由来に加え、ひがし茶屋街からのアクセスルートや周辺の観光情報を詳しく紹介します。ビギナーにもわかりやすいルート案内で、金沢旅行をさらに充実させましょう。
目次
金沢ひがし茶屋街近くにある「あかり坂」の魅力
金沢の三大茶屋街のひとつ、ひがし茶屋街から浅野川を渡った反対側にある主計町茶屋街。その裏手にひっそりと佇むのが石段坂「あかり坂」です。小さな標柱には「暗い夜に光をともすように」といった趣旨の文章が刻まれており、名前の由来を物語っています。坂の両側には出格子(べんがら格子)の古民家が連なり、昼間でも薄暗く神秘的な雰囲気が感じられます。このような佇まいから、映画や小説の舞台に起用されたこともあります。
特に夕暮れ時は、石段に灯る街灯の光と町家の風情が溶け合って一層ロマンチックな風景になります。観光客でにぎわうひがし茶屋街とは対照的に、主計町茶屋街はどこか静かで落ち着いた雰囲気が漂うエリア。その奥にあるあかり坂は、金沢らしい情緒をひしひしと感じられる散策スポットといえるでしょう。2010年頃までは目立たない名前のない坂道でしたが、今では石碑も立って知られるようになりました。
あかり坂とは?
あかり坂は、まだ日の浅い作家・五木寛之氏によって名付けられた石段です。主計町茶屋街の北側、浅野川近くの静かな路地の奥にあり、下新町(しもしんちょう)と新町(しんちょう、ともに主計町の一部)を結んでいます。幅はいずれも人がすれ違える程度の細さで、段数は20~30段ほどとやや短めです。両脇には筆で塗られたような赤色(紅殻色)の格子戸の町家が並び、格子越しに竹や緑がちらりと見える風景が情緒を添えています。
昼間は光が遮られて静かなトンネルのように感じますが、夜になると家々の小さな明かりが坂道を優しく照らし、人通りもほとんどないため、明かりだけが浮かび上がる幻想的な景観が楽しめます。坂を上った先の左側に小さな祠が見え、右側には石畳に続く細い路地があります。このまとめられた風情が訪れた人にとって非日常的な空間を演出するのが、あかり坂ならではの魅力です。
雰囲気と見どころ
あかり坂の最大の魅力は、何と言っても「時間が止まったかのような情景」です。石段を下りるとまもなく主計町の表通りに出ますが、坂道自体は観光客でもほぼ人が通らない静けさ。石段の途中には灯籠や小さな社(やしろ)などが点在し、特に夕刻以降は坂道に揺らめくあかりが美しく情緒を醸し出します。カメラ片手に訪れる人も多く、「金沢らしい原風景」を感じられるスポットとして人気が高まっています。
坂を下りた先の主計町表通りには古い料亭やお茶屋が並ぶほか、近くに「金沢あかり坂探訪館」という芭蕉や地元作家の資料展示館もあります。さらに西にある暗がり坂側にはアメリカ人画家クリフトン・カーフ氏が手掛けたカフェ〈まゆ月くらがり坂〉があり、散策に疲れたら立ち寄って一息入れることも可能です。あかり坂そのものは特に夜間ライトアップされるわけではありませんが、街灯と町家の窓の明かりだけでどこか幻想的な雰囲気が味わえます。
映画や文学に登場するあかり坂
あかり坂はその幻想的な雰囲気から、幾つかの映画やドラマ、小説の舞台にもなっています。命名者である五木寛之氏自らが、この坂道にインスピレーションを受けて小説『金沢あかり坂』を執筆しました。作品には、古都金沢の情緒あふれる裏路地として登場し、情景描写で何度も取り上げられています。
また、テレビドラマや映画のロケにも使用されることが多く、和服姿の登場人物がしっとりと石段を下りていくシーンなどで目にすることがあります。こうした映像作品をきっかけに、あかり坂を訪れる観光客も増加傾向にあります。散策中にカメラを構える人も多いですが、この場所は他の観光地のような混雑は少ないため、落ち着いて撮影できるのが嬉しい点です。
あかり坂の歴史と由来

あかり坂が誕生したのは比較的最近のことです。江戸時代から続く主計町茶屋街の裏通りには、長い間この坂道に正式な名前はありませんでした。しかし太古の信仰も感じさせる石段の趣に、地元住民はその情緒を後世に伝えたいと考えていました。そこで2008年に主計町の旧町名復活を機に、地元イベントで作家・五木寛之氏に命名を依頼しました。
五木寛之氏は、坂の持つ哀愁や明かりのイメージを組み合わせる形で「暗がり坂」に対比する「明かり坂」という名前を提案しました。命名にあたり、氏は泉鏡花の詩情を参考にしたと言われています。境内を通り抜ける暗く細い路地を「暗がり坂」と呼んでいたのに対し、もう一方の坂道は光を感じさせるイメージで「明(あか)り坂」、後に平仮名で「あかり坂」と正式に名付けられました。
命名のエピソード
あかり坂の名付け親である五木寛之氏は、金沢文学館のある金沢市内の名士であり、泉鏡花研究家としても知られる作家です。2008年に主計町自治会から坂道に名称を付けてほしいとの依頼を受け、SNS上でもファンを集いながら文学作品の一場面のような命名を考案したと伝えられています。
命名の式典では、五木氏自身が揮毫した書で石碑が完成し、「暗い夜に明かりをともすがごとく」と揮毫された文字が刻まれました。以降、この石段は「あかり坂」として観光地マップにも掲載されるようになり、地元住民にも親しまれる存在となっています。
『金沢あかり坂』と泉鏡花
五木氏は作中で、地元ゆかりの作家・泉鏡花への敬意を込めて名前に「明かり」を用いたと言われます。鏡花の作品には、金沢の夜景や祭りの光景が多く描かれており、「あかり坂」の命名も鏡花の詩句「曙光」(あけのあかり)にちなんでいると伝えられています。つまり、坂道の先にある光を灯したいという願いと、金沢文学へのオマージュが込められているわけです。
実際、あかり坂の石碑には「泉鏡花を偲んで名付けられた」という記述があり、名前に込められた物語性も魅力の一つです。こうした背景を知って歩くと、石段一つ一つや周囲の景色に、金沢の文学・芸術文化の香りを感じることができます。
あかり坂へのアクセス・行き方

あかり坂はひがし茶屋街から徒歩で約5分、浅野川大橋を渡って川向こうにあります。ひがし茶屋街メインストリートから浅野川大橋方面へ進み、橋を渡る手前にある信号で道路を横断します。そのまま川沿いの道を進むと主計町茶屋街の入り口付近に出るため、案内板に従って路地に入るとあかり坂への入口が見えてきます。
なお、徒歩ルートには2つの標識ポイントがあります。ひがし茶屋街の東山木町通りから大通りを渡り、浅野川大橋へ向かうルートです。川沿いに続く道を進んでいくと「暗がり坂」「あかり坂」の標識が見えますので、カメラを構えてじっくり散策しながら歩きましょう。
ひがし茶屋街から徒歩で行くルート
ひがし茶屋街の真ん中あたりにある十間堀川沿いの通り(にし茶屋街方面へも通じる通り)から西側の信号を渡ります。渡った先に見える浅野川大橋を横切り、川を挟んで向かい側の主計町茶屋街へと続く通りに入ります。そのまままっすぐ50mほど進むと主計町表通りに出ます。そこから狭い路地に入り、100mほど進んだ左手にある石段があかり坂です。
土日祝日はひがし茶屋街周辺が混み合いますが、徒歩なら自由にルート変更できます。あかり坂は主計町茶屋街の奥にあるため、人混みを避けたい場合は朝早めや夕方以降に狙うのがおすすめです。
バス・車でのアクセス
車で行く場合、主計町茶屋街周辺に駐車場は無いので、ひがし茶屋街周辺のコインパーキングを利用するのが一般的です。金沢駅方面からは「香林坊」や「武蔵ヶ辻(近江町市場)」を経由するバス路線で、橋場町(主計町茶屋街前)バス停で下車すると便利です。金沢周遊バス「右回りルート」であれば城下まち金沢周遊バスの7番乗り場から約12分で「橋場町(金城樓前)」停留所に到着します。
また、主要な観光地を巡る便利な方法として「金沢周遊バス」やフリー乗車券を利用できます。橋場町バス停からは橋の手前にあかり坂方面への小路があるので、地図や現地案内を確認しながら向かってください。
ひがし茶屋街を楽しむポイント
ひがし茶屋街自体は金箔や伝統工芸でも有名で、紅殻格子に覆われた町家が立ち並ぶ観光名所です。重要文化財の「懐華楼」や金澤町家を改装したカフェなど、情緒ある風景の中で和の文化を体感できます。舞妓さんの舞が見られる「ひがし茶屋街 彩」や金沢の風情を売りにした茶屋遊び体験も人気です。
グルメ面では、金箔を使ったソフトクリームが名物。町家を再生した茶店「箔一東山店」では金箔ソフトクリームが味わえます。歩き疲れたら旧銭湯をリノベーションした「茶屋町浴場」カフェでくつろぐのもおすすめです。さらに路地裏には和テイストのお土産屋や工芸品店が点在し、まるでタイムスリップしたかのような散策が楽しめます。
夜になるとひがし茶屋街全体のライトアップが始まり、提灯や街灯に照らされた石畳がロマンチックな雰囲気を演出します。あかり坂と同様に、夜間に訪れるとより一層幻想的な景観が味わえるので、夕方から夜にかけて散策するのも良いでしょう。
歴史的な街並みと文化体験
ひがし茶屋街は天保年間(1830年代)に公許された花街で、江戸時代末期から続く格式高い街並みが今に残っています。保存地区に指定された町家はすべて保存修理が義務付けられており、町並みはいつ訪れても絵になる美しさです。ここでは伝統工芸体験も盛んで、箔貼りや和装レンタルで当時の文化に触れることもできます。
伝統芸能では、金沢の地歌舞伎や日本舞踊のショーが開催されることもあります。ひがし茶屋街の裏には東山菩提樹店があり、工芸金紙を使った工芸体験が人気です。金沢の伝統文化に興味がある方は、茶屋街と併せてこれらの体験を楽しむのがおすすめです。
金沢名物グルメを満喫
金沢といえば金箔。ひがし茶屋街の入口近くには箔一東山店があり、金箔ソフトクリーム(「金箔のかがやきソフト」)が観光客に大人気です。その他にも金沢おでんや加賀棒茶、和菓子など、石川の郷土料理を味わえる店が並んでいます。浅野川近くには老舗甘味処「村上菓子舗」もあり、銘菓「落雁」を購入することもできます。
また、古民家を改装したおしゃれなカフェも多く、和カフェ巡りも楽しいところです。金沢ご当地グルメの名物「金沢カレー」も町家風の店で味わえるので、ランチにはぜひ金沢らしさ溢れる料理を満喫してみてください。
夜の幻想的な雰囲気を楽しむ
ひがし茶屋街エリアは夜になるとライトアップが行われ、町家の格子戸に灯りがともります。昼間とは違って静けさの中に揺れる光が彩るため、写真映えするスポットが多数あります。ひがし茶屋街や主計町茶屋街は、周囲に飲食店や旅館もあるため、夜景散策の後に夕食や宿泊を楽しむプランも立てやすいです。
特にあかり坂は、近くに店が少ないため街灯だけで照らされる純粋な幻想空間となります。夜景を楽しむならあえて人通りが少ない夜時間帯を狙うのがおすすめ。周辺の料亭や旅館では浴衣貸し出しを行うところもあるので、和装で歩くのも雰囲気を盛り上げてくれます。
暗がり坂とあかり坂:主計町茶屋街の二大観光スポット

主計町茶屋街には、あかり坂のほかにも石段の「暗がり坂」があります。暗がり坂はあかり坂を上った先にあり、久保市乙剣宮(くぼいちおつつるぎぐう)の鳥居から下る階段です。暗がり坂とあかり坂は出口が違うだけで並行しているため、セットで散策するのが定番となっています。行きは暗がり坂を下り、帰りはあかり坂を下りるコースを歩くと、表情の違いが堪能できます。
下記の表に、暗がり坂とあかり坂の特徴をまとめました。どちらも「石」「坂」「町家」という共通点がありますが、由来や雰囲気にはそれぞれの個性があります。
| 暗がり坂 | あかり坂 | |
|---|---|---|
| 場所 | 久保市乙剣宮の裏手、神社鳥居のすぐ下 主計町茶屋街表通り側 |
主計町茶屋街の裏路地の奥 暗がり坂と石段でつながる |
| 名前の由来 | 昼でも薄暗い雰囲気から伝統的に呼ばれていた | 2008年に五木寛之氏が命名。泉鏡花の詩を参考に明かりのイメージ |
| 雰囲気 | 日中でも薄暗く神秘的 ゆるやかに下りながら浅野川へ向かう |
夕暮れ時に美しく映える 小径から急な石段が上りになる |
| 見どころ | 石段頂上に久保市乙剣宮の鳥居と境内を臨む 近くのカフェ「まゆ月くらがり坂」 |
坂の両脇に紅殻格子の町家 石段の先に主計町表通りが見える眺め |
暗がり坂の見どころ
暗がり坂は桜や紅葉の名所でもある久保市乙剣宮の参道にあたる石段です。境内からちょうど坂を見下ろすことができ、夜には鳥居の灯りと相まって撮影スポットとして親しまれています。坂下にはクリフトン・カーフ氏設計の〈まゆ月くらがり坂〉カフェがあり、芸術作品に囲まれてゆったり過ごせます。また、石段は「下新町一の据石(大きな石)」の切通しの名所にもつながっており、文学作品にも度々登場します。
あかり坂の見どころ
あかり坂は、階段の上り口から既に紅殻格子の家並みが連なり、下から眺めるとまるで石段の天井が赤一色になっているかのように見えます。坂の中腹には小さいながらも祠があり、参拝する人も少なく静かに手を合わせられます。石段を下った突き当たりには泉鏡花記念館があり、鏡花作品に思いを馳せることもできます。帰り道に暗がり坂から外を見ると浅野川のライトアップも楽しめるため、二つの坂を組み合わせると多彩な風景に出会えます。
散策のコツとおすすめの歩き方
暗がり坂あかり坂とも日影になるため、午前中から午後早い時間にかけて訪れると陰影が少なく、写真映えするやわらかな光が坂を包みます。ただし午後4時以降でもライトアップはされないため、夕暮れの静寂と浮かび上がる灯りを楽しみたい場合は遅い時間もあり。両方の坂は互いに徒歩2~3分の距離なので、行きと帰りで違う坂を下るのがおすすめです。
階段は滑りやすい石畳なので、ヒールの靴より歩きやすい靴で訪れましょう。また、周辺は細い路地が多いため道に迷いやすい場合があります。現地には案内板が少ないので地図アプリを使って正確なルートを確認すると安心です。ひがし茶屋街へ戻る際は、橋場町バス停まで川沿いを歩くと、川面に反射する夕景も楽しめる散策路となります。
周辺のおすすめスポット・グルメ
あかり坂や暗がり坂を巡った後は、目の前の浅野川沿いにある観光スポットも訪れてみましょう。徒歩圏内には金沢城公園や兼六園、21世紀美術館、長町武家屋敷跡などがあります。兼六園へは橋場町から徒歩約15分。21世紀美術館までは車道を使えば15分ほどで、周遊バスのルートにも含まれています。茶屋街だけでなく、城下町の名所を含む金沢散策コースに組み込むのも便利です。
また、主計町茶屋街の細い路地を散策する際は、お土産選びもお忘れなく。ひがし茶屋街に負けず劣らず魅力的なお店が多く、金箔土産や和菓子、漆器など伝統工芸品を扱う専門店があります。特に主計町名物の金箔菓子や、金沢の地酒を試飲できる酒屋も近くにありますので、散策の合間に金沢グルメも楽しめます。
兼六園・金沢城公園へのアクセス
兼六園・金沢城公園へは、あかり坂周辺から徒歩約20分で行けます。浅野川大橋を渡り直進すると金沢城公園の石川門前に到着し、そこから兼六園へ入園できます。ルート上には主計町緑水苑や浅野川大橋の景勝地もあり、途中に金沢の歴史を感じるスポットが点在しています。早めにひがし茶屋街・主計町を出発すれば、午後には昼過ぎから兼六園で心地よい庭園散策も可能です。
21世紀美術館・長町武家屋敷跡
金沢21世紀美術館と長町武家屋敷跡は、あかり坂からバスで約15分の距離です。橋場町バス停から香林坊方面行きの周遊バスに乗ればすぐです。21世紀美術館は現代アートの名所で、室内外にユニークなオブジェが点在しています。長町武家屋敷跡は江戸時代から残る武家屋敷の町並みで、しっとりとした石畳の路地を歩きながら当時の暮らしに思いを馳せることができます。
ひがし茶屋街に戻った後は、ひがし茶屋街・主計町茶屋街・長町武家屋敷の3箇所を回る「三茶屋街モデルコース」が観光協会の定番となっています。2時間程度で三茶屋街の雰囲気を満喫できるので、時間が限られている人にもおすすめの散策ルートです。
まとめ
金沢ひがし茶屋街近くにあるあかり坂は、知名度はまだ高くないものの、情緒溢れる隠れスポットとして注目されています。五木寛之氏が命名した歴史とロマンチックな雰囲気が魅力で、主計町茶屋街の散策をより一層特別なものにしてくれます。ひがし茶屋街の喧騒を抜けて、石段の先にある静けさと美しい街並みを体感してみてください。アクセスも良く、近くには兼六園や美術館など他の名所もあるので、金沢観光のルートに組み込みやすい魅力的な観光スポットです。
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